印象語義
印象語義(英:"Imaginary Semantics")とはクノーツカルノスアクアによって考案された、意味に関する概念または考え方である。語句の意味を説明するのに国語辞典の様な意味の説明が、場所・状況・感情などの周囲の状態によって変化しうる事の説明として見いだされたのが始まりである。さらに「定義された語義よりも本質的な意味があるのではないか?」という問題の提起も含意することがある。
具体的には、ある語句の語義を他の語句の語義とを比較し、その結果から得られたその語句のイメージ(特徴や性質など)を指す。またその方法論から関係性語義(英:"Relational Semantics")とも呼ばれる。
「イメージ」という語句を用いる理由としては、そもそも語句の意味合いの理解が各個人で主観的に理解されており、その個人によって多少のばらつきがあるためである。
印象語義は語句の意味や関係性をとらえるのに役に立つだけでなく、ほぼ同義な類似した意味を持つ語の増殖を抑え必要な語句を選択的に作れるようになったり、比喩的表現や象徴的表現を創発させたりできるのではないかと考えられる。
用語
まず、初めにここで用いられる用語について説明する。
語義
語義(英:"Semantics")とは国語辞典に書かれるようなその言葉を端的に表した文章のことである。語義を一つの表にまとめたものを語義表(英:"Semantics Table")と呼び比較をする際に作成される。
語句 | 語義 |
---|---|
走る | 出来るだけ速い速度で何かが移動する様子 |
寝る | 体を横にして休む様子 |
ある | 実体を持っている様子 |
食べる・飲む | 口の中に物を入れ取り込む様子 |
去る | どこか遠くへ行ってしまう様子 |
語義表の例
性格
性格(英:"Character")とは、ある語と別の語の語義を比較する事によって得られた用法や意味の違いを一般に共有されている意味の範囲で書き換えたものである。比較によって得られた相違点はそれぞれ辞書項目として書かれ、共通点はあらゆる文脈において一般化された意味として共通するものである。
性格には具体性と呼ばれる分類がある。性格は後述する性格素の量によって具体性が変わる。性格素の多い性格はより具体的になる。一方で性格素の少ない性格はより抽象的になる。以下に差異をまとめた表を用意する。
具体性の高い性格 | 具体性の低い性格 | |
---|---|---|
項目数 | 多い | 少ない |
自由度 | 低い | 高い |
多義性 | 低い | 高い |
複雑さ | 高い | 低い |
厳密さ | 高い | 低い |
曖昧性 | 低い | 高い |
性格素
性格素(英:"Character Element")とは比較によって得られた意義素やそれに類似した意義素を含む集合の特徴や性質の事である。特徴や性質の説明には以下の三つの表し方がある。
対象 | 項目 | 内容 | |
---|---|---|---|
数値 | 早い | 進行度 | +1 |
特性 | 紫 | 色彩 | 紫 |
定義 | 食べる | 副行為 | 対象をかみ砕く事 |
性格素の記述は標準的な意味、つまりプロトタイプなコロケーションを意味する。話者はこれに従うも従わないのも自由である。また、部分的に従いつつ意味の範囲から外れた用法のことを比喩と呼ぶ。
調和性格素・不和性格素
調和性格素(英:"Symmetry Element")とは性格素の中でも他の性格素から意味的に含意されるものを指す。共通部とも呼ばれる。一方で、同じ調和性格素を含意するそれぞれの性格素のことを不和性格素(英:"Discord Element")と呼ぶ。相違部とも呼ばれる。
役割
役割(英:"Role")とは性格の意味とは別に文脈による情報を書き出したものである。そのため性格と比べると変化しやすい。具体的には例文より派生するその例文の意味やその構造を表した構文木などが含まれている。
粒度
粒度(英:)とは性格素の細かさを表す指標である。粒度の測定は直接的には不可能であるが定義よりも概念や数値のほうが粒度が大きい場合が多い。ここでいう細かさとはその性格素がどれだけ意味的な根本に近いのかということである。
性格表
性格表とは語義表をもとに印象語義を測る手段として考え出された性格素の表である。具体的な例は以下に記述する。性格表によってまとめられた性格素は新たな語義を作成するのに使うことができる。
食べる | |
---|---|
分類 | 行為 |
種類 | 獲得 |
行為者 | 捕食者 |
対象 | 食用の固形物 |
場所 | 口内 |
道具 | 歯, 牙 |
主行為 | 飲み込む |
副行為 | かみ砕く |
方法
性格表の作り方
性格表を作る方法として、抽出法と合成法の二つがある。それぞれのやり方で求められる性格が異なるので注意がいる。
抽出法 | 性格同士を比較して共通点や相違点を探る。共通点を探った場合、項目名を取り出せる。一方で相違点を探った場合、内容を取り出せる。ちなみにその項目名や相違点は其々が性格素と扱われる。 |
---|---|
合成法 | 性格を新しく組み立てる。挿入と消去と置換の三種類の操作がある。挿入は性格表に新しく性格素を追加する操作で、消去は性格表から性格素を取り除く操作である。置換は性格表の性格素を別の性格素に置き換える操作である。 |
抽出法の例
食べる | 飲む | 共通部分(KEY) | 異なる部分(VALUE) | |
---|---|---|---|---|
分類 | 行動 | 行動 | 行動 | - |
種類 | 獲得 | 獲得 | 獲得 | - |
行為者 | 捕食をする生き物 | 捕食をする生き物 | 捕食をする生き物 | - |
対象 | 固形物 | 水のような液体 | 可食性の物 | 液体か固体か |
場所 | 口の中 | 口の中 | 口の中 | - |
道具 | 歯 | - | - | 歯の使用の有無 |
主行動 | 対象を飲み込む | 対象を飲み込む | 対象を飲み込む | - |
副行動 | 対象を噛み砕く | - | - | 噛み砕く必要の有無 |
合成法の例
「摂取する」 | 付加・変更内容 | 「食べる」 | |
---|---|---|---|
分類 | 行動 | 行動 | |
種類 | 獲得 | 獲得 | |
行為者 | 捕食をする生き物 | 捕食をする生き物 | |
対象 | 可食性の物 | 肉や野菜の様な固形物 | 肉や野菜の様な固形物 |
場所 | 口 | 口 | |
道具 | - | 歯 | 歯 |
主行動 | 対象を飲み込む | 対象を飲み込む | |
副行動 | - | 対象を噛み砕く | 対象を噛み砕く |