語句の溶融率

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語句の溶融性とは、単語や接辞に対する意味の強靭さや形態素の独立性に関する思考実験である。

概要

よく言語を分類する際に以下のような基準を参考にすることがある。

  • 孤立語    : 形態論的手段を全く用いず、一つの語が一つの形態素に対応する言語
  • 屈折語    : 語の内部に形態素が分割できない形で埋め込まれている言語
  • 膠着語    : 接辞の形態素を付加し、文中の文法関係を示す言語
  • 抱合語    : 意味的・文法的な単位が動詞に複合され、文章に相当する意味を表現しうる言語

これらの要素は一見別物の様に見える。しかし、実際は単語や接辞の用いられ方によって分類されているものに気付くだろう。ここで、そういった用いられ方による違いを大きく「意味の強靭さ」と「形態素の独立度」という風に分けて考える。ここで幾つかの例を挙げる。

例えば、英語の場合はどうだろうか?英語は屈折語と呼ばれる分類に入ることもある(孤立語寄りになっているという話はここでは置いておく)。

幾つかの単語を持ってきて調べてみると

  • INFLATION : IN- + FLATE + -ATION
  • SUBSCRIBE : SUB- + SCRIBE
  • SUPPOSE : SUB- + POSE

という感じで分解できるだろう、ここで、接辞に注目してみる。接辞は断定可能なほどの意味を含んでいるだろうか?おそらく難しいと思われる。理由は単純で曖昧と呼べるかどうかも怪しいぐらいに意味があいまいになっているからだ。理解するにはイメージを描いて説明する他ない。単語に視点を移すと、訳語を指定できるほどの意味でまとまっており一貫性を感じられる。こういった場合は、「意味の強靭さ」については接辞では弱く、単語では強いという関係が成り立つ。また、「形態素の独立度」については接辞では弱く、単語では強いと言える。

さらに、日本語の場合はどうだろうか?日本語は膠着語と呼ばれる分類に入る。

そこで、該当しそうな単語を持ってきて調べてみると、

  • なぐりつくせられる : なぐる + つくす + せる + れる
  • すいつくされようとしている : すう + つくす + される + よう + と + する + て + いる

という感じで分解できるだろう(もしかしたらもっと細かくできるかもしれないが)、ここでも先ほどと同じく接辞に注目してみる。接辞は完全な独立性はないものの、ある程度意味を確定できるほどには意味を把握できるだろう。単語はどうだろうか?こちらも英語同様語義が説明できるほどには意味も分かり、あらゆる文章でも使える形にはなっているだろう。「意味の強靭さ」については、接辞と単語が同じかそれ相応に強いが、「形態素の独立度」では、接辞は弱く、単語は強くなっている。

このように、二つの観点から、見ることでその言語の形態論的な特徴を調べられるようになっている。この特徴を 0 から 1 までの実数で表せないかと考えるわけだが、「意味の強靭さ」と「形態素の独立度」はそれぞれ正の相関があるように、また、自然対数的に増加すると考えられる。