音韻規則記述言語

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音韻規則記述言語(PRDL; Phonetic Rule Description Language)とは、デネブさんによって提唱された、言語音の条件異音などを簡潔に記述するためのドメイン固有言語である。一般に条件異音やアクセント規則の記述は、その内容に対して記述量が膨れ上がってしまうことがある。これを避け、紙面を節約するためにPRDLを用いる。

基本仕様

PRDLでは、音声の特定にIPAを用いる。ラテン文字の大文字は、その意味を記述者が自由に定義できる(Cは子音、Vは母音、Wは唇音、Xは軟口蓋音、…)。また、比較的多くの言語で用いることができると考えられる記号に関して、ここで基本的な仕様を定義する。

  • // や [] は既存の慣習に従う。
  • -(マイナス)は語を表す。
  • +(プラス)は句を表す。
  • =(イコール)は文を表す。
  • .(ドット)は音節もしくは音節境界を表す。
  • \(バックスラッシュ)はいくつかの略記に用いる。使い方は例を参照のこと。
  • >(大なり記号)は、左辺に変化前を表す記述を置き、右辺に変化後の記述を置く。どちらも間にスペースを挟まなければならない。また、左辺を複数並べたい場合、スペースで区切る。
  • ;(セミコロン)は規則を並べるときの区切り記号である。

実際に記述する際は、必要に応じて仕様の一部を取捨選択または変更すること。例えば文という概念のない言語では = は無意味なので、その意味は自由に定義してよい。定義しない場合は、混乱を避けるため使わないほうがよい。

  • -/a/ : 語末の /a/ 。
  • /a/- : 語頭の /a/ 。
  • -/a/- : 語中の /a/ 。
  • \a/\- : 上の別表記。
  • \a\- : 上の略記。
  • -/a\- : 語末または語頭の /a/ 。
  • /a/\- : 上の別表記。
  • /a\- : 上の略記。
  • /b/˘ : 短音節頭の /b/ 。
  • ˘/b/ : 短音節末の /b/ 。
  • /n̆/ : 短音節核の /n/ 。
  • /ɾ/+ > [ɺ] : 句頭の /ɾ/ は側面音化する。
  • +/g/+ > [ɣ] : 句中の /g/ は [ɣ] と発音される。
  • V/g/V > [ɣ] : 母音に挟まれた /g/ は [ɣ] と発音される。
  • /ë\ɺ > [e] : /ɺ/ の前または後では /ë/ は [e] になる。
  • ɺ/ë/ɺ > [e] : /ɺ/ に挟まれた /ë/ は [e] になる。
  • \ë\ɺ > [e] : 上の略記。
  • ˘./b/ː.˘ > [p] : 短音節に挟まれた、長音の前の /b/ は無声化する。
  • \b/ː\.˘ > [p] : 上の略記。
  • /˧/.˥ > [˦] : 超高音節の前の中音節は高音節になる。
  • m//g > [ŋ] : /mg/ という並びがあったら緩衝音 [ŋ] が間に入る。
  • +// > [˩˥] : 句末は上昇調になる。
  • +// > [↗] : 句末にかけて上昇調になる。
  • -//. > [ˊ] : 語の後ろから二番目の音節にアクセントが来る。
  • /pʰ/C \pʰ\˘ > [p] : 子音の前の /pʰ/ 、および短音に挟まれた /pʰ/ は [p] と発音される。
  • ˘.ː/b/.˘ : 短音節に挟まれた、長音の後の /b/ 。
  • \ː/b\.˘ : 上の略記。

これらの記述や解釈はあくまで例であり、各言語独自の定義によって異なる解釈がなされることもある。