黙字
黙字とは、表音文字[1]を使用する言語に於いて、綴られているにもかかわらず発音されない文字のことである。サイレントとも言う。
自然言語に於ける黙字
自然言語に於いては主に以下のような歴史的な理由で黙字が存在することがある。
- かつて発音されていたものが発音されなくなった(例:英語の-e、-mb、kn-)
- そもそも音素自体が失われた(例:英語で/x/を表していたgh、トルコ語で/ɣ/を表していたğ)
- 外来語に含まれていた子音連続の発音が困難だった(例:ギリシャ語由来の単語に於けるps-)
- 語源を示すために黙字をあえて付け加えた(例:debtのb)
なお、それ自体は黙字であっても、直前の文字の発音に何らかの影響を与えるものもある。
- 英語の語末-eは子音字を跨いでひとつ前にある母音の発音を変化させることが多い。
- トルコ語のğは直前の母音を長母音化する場合がある。
ラテン文字以外の言語としては、例えばチベット語やタイ語は黙字が多い。また、ハングルは文字自体が黙字になることはないものの、文字を構成する子音記号の一部が読まれないことがある(二重パッチム)。これらもやはり歴史的な理由によるものである。
人工言語に於ける黙字
人工言語であえて黙字が設定されることは少ないが、架空世界で話されている自然言語という設定で言語を作っている場合、あえて黙字を取り入れることによってリアリティを演出することができるかもしれない。ただし、何の理由もない黙字というのはやはり不自然であるため、古語の設定や音韻変化の歴史の設定なども作り、黙字が存在する理由を説明できるようにしておく必要があるだろう。
注釈
- ↑ 漢字でも、主に固有名詞に於いて黙字が発生することがある。例えば「和泉(いずみ)」の「和」など。