転写

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転写とは、ある言語の発音を他の文字体系で表記することである。例えば日本の固有名詞(地名や人名など)をローマ字表記したり、英語圏の固有名詞をカタカナ表記したりすることなどである。あくまでも発音に基づいており正書法上の表記を考慮するわけではないこと、また、言語によって音韻がそもそも異なることから、必ずしも元の言語の音素の区別を保持するとは限らない[1]し、元の言語に於ける表記を完全な形で再現できるとも限らない[2]

それに対して、ある文字体系で記された言語を他の文字体系に1対1対応で機械的に置き換えることを翻字という。翻字されたものからは元の表記を完全な形で再現することが可能である。

例えばギリシャのアテネ市内にある地名Πειραιάς(発音は/pireas/)は、発音に基づいて転写すればPireas、翻字ではPeiraiásとなる。転写のPireasからは元のギリシャ文字表記のΠειραιάςを復元できない。

独自の文字を持った人工言語を既存のラテン文字で表記するのは、ラテン文字表記されたものから独自文字での表記を再現できること(すなわち、ラテン文字に変換する過程で、元の表記に関する情報が失われることがない)を前提としており、しばしばラテン文字転写などと呼ばれるが厳密には翻字である。しかしながら、人工言語は綴り字と音韻がほぼ1対1対応している場合が多いため、転写と翻字の違いが問題になることは少ないと考えられる。

注釈

  1. 例えば英語の/r/と/l/の違いはカタカナでは表現できず、どちらもラ行で転写されることになる。
  2. 例えば日本語の「ず」と「づ」はラテン文字(ローマ字)に転写するとどちらもzuになり、「ず」と「づ」の違いに関する情報は失われる。