人工言語の分類

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人工言語とは、個人または集団によって意識的に作られた言語のことである。様々な理由により、世界中で多様な言語が作られてきた。それらをどのように分類するかについては、国内の人工言語作者のあいだでも種々の議論があった。

Se分類

人工言語界隈において、セレン・アルバザード氏の説明[1]によるSe分類と呼ばれるものが長らく一般的である。

目的別
  • 国際補助語(international auxiliary language、auxlang)
    かつてのラテン語や英語のような国際語 (共通語) とまではいかないものの、それに準じるような存在を目指した人工言語のこと。
  • 芸術言語(artistic language、artlang)
    小説や漫画や音楽など、何らかのコンテンツの中で使用することを目的とした人工言語のこと。架空言語、創作言語とも。
  • 工学言語(engineered language、engelang)
  • 哲学や論理性を追求したり、何らかの実験に用いられたり、機械を動かしたりするために作られた人工言語のこと。哲学的言語、論理的言語、実験的言語、コンピュータ言語などの下位区分がある。
  • 哲学的言語(philosophical language)
    理想言語 (ideal language) とほぼ同義で、バベルの塔崩壊以前に存在したアダムの言語や神の言語の再建を目指したもの。
  • 論理的言語(logical language、loglang)
    自然言語にあるような曖昧性や非論理性を排他した論理的な人工言語のこと。文法や文の解釈の曖昧性を排他することを目的に作られた。厳密には、形式論理の表現形式を実装している言語のこと。
  • 実験的言語(experimental language)
    何らかの実験を行うために作られた人工言語のこと。
  • プログラミング言語(programming language)
    機械に作業をさせるための言語。人によってはコンピュータ言語を人工言語から除くこともある。しかし歴史的には近世の人工言語ブームで活躍していたライプニッツらに端を発する言語なので、人工言語の一種である。
アプリオリアポステリオリ
既存の言語から語彙や文法などを流用したものをアポステリオリ(a posteriori)あるいは後験語[2]といい、そうでないオリジナルでゼロから作ったものをアプリオリ(a priori)あるいは先験語[2]という。

このように、Se分類は人工言語の目的をそれぞれ単一のカテゴリに分類しようとするものである。これは、言語を概括して呼称するためには有用だが、一方で、複数の性質を合わせもつ言語をうまく分類できなかったり、人工言語作者それぞれで、分類の呼称の意図が大きく異なっていることも往々にしてある。

Gnoli の三角形

日本の人工言語コミュニティではあまり話題には登らないが、(歴史的経緯は明らかでないが)Se分類の離散的な分類をややアナログにしたものとして、Gnoliの三角形というものがある。 これは、Se分類でいうところの芸術言語(artlang)、国際補助語 (auxlang)、工学言語(engelang)の主要3分類を三角形の頂点に置き、その三角形内を指示することで、その3要素の中間部分でのラベリングを可能にしたもの。たとえば、ある人工言語作者は、自作言語について「70%芸術言語、20%工学言語、10%国際補助語」というように言い、三角形上のある一点を指すことができる。

Gnoliの三角形は、複数の特徴を合わせもつ言語の分類を可能にしてはいるが、目盛りが細かすぎるがゆえに各作者によって数値の基準が異なりすぎ、絶対値による比較が難しいという側面が出てくる(もしあなたが人工言語作者なら、Gnoli の三角形上にあなたの言語を置いてみると良いだろう)。

モユネ分類

詳細は「モユネ分類」を参照

2015年頃にもやし氏、おかゆ氏、デネブ氏によって確立された分類法(草案[3]をデネブ氏が拡張したもの)である。この分類法では、作者の意図する用途や趣旨によって人工言語をタグ付けすることができる。例えばエスペラントは INT/CDE/GEN/SER/SON/LIT/REA/PPO のように分類されるだろう。ネーミング用言語など細かな目的に特化したものは、きりがないため、一括して SPE に分類され、それ以降は各言語特有の性質として扱われる。表音・表意文字なども同様である。屈折語、膠着語といった自然言語の類型などは NAT の下位分類として扱われるだろう。

複数の側面をもった言語というものも可能なため、一見相反する分類が両立することがある。たとえば、冗談としての完成度を高めたいという場合には SER/JOK が立つだろうし、文化非依存的な運用と文化依存的な運用の両方を想定する言語の場合には CIN/CDE が立つだろう。

脚注

参照