文法範疇

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文法範疇、または文法カテゴリーとは、などの統語論的単位(統語範疇)において、いくつかある分類の中からただ一つが選択され現れるような分類のまとまりのこと。

複数の語句にまたがって同じ文法範疇が強制的に選択されることがあり、これを文法範疇の一致とよぶ。

自然言語の文法範疇

人工言語制作における文法範疇

人工言語制作にあたっては、前述した馴染み深い文法範疇を導入するとしても、あるいは独自に定めた概念を文法範疇として導入するとしても、それが本当に文法範疇であるのか、文法範疇と呼んでよいのかわからず、記述する際に方針を見失うことになるかもしれない。

例えば、日本語において「それ」と「それら」は、あくまで意味論的には単数・複数として対立させることもでき、ここにはあたかも代名詞に数があるかのように見えてしまう。しかしながら、一般に日本語には文法範疇としての数はないとされる。では、何をもって文法範疇と呼べばよいのか。

このようなときに採るべき考え方の一つは、「その概念が統語論的機能にかかわっているかどうか」である。一致や支配、もしくは句や節の形成といった何らかの統語論的な制約にかかわっていればそれは文法範疇であり、かかわっていなければ文法範疇ではない、と考えるのである。この考え方を採用するならば、文法範疇とは、文におけるある種の強制力を持ったものとして働く必要がある。動詞の数は主語の数に一致しなければならない、といった具合に。

文法範疇の要素

少なくとも伝統的な意味での文法範疇には、それを構成する要素が二つある。

  1. 統語性。何らかの統語論的制約にかかわっていること
  2. 意味性。生活における何らかの実践的な区別を反映していること

統語性については前項で述べたとおりであり、実質的に統語論的機能にかかわっていなければ文法範疇とする必要はなく、単なる語彙でよい。意味性は、例えば数なら基数(個数)、性なら性別、相なら動作の経過的な特徴、といったように、話者がすべての状況について普遍的に適用できる(どれか一つには分類できる)と考えている概念を反映しているということである。

統語性は、文法範疇を構成するための必須の要件であると考えられる。意味性は程度問題であり、場合によっては無いこともある。性が文法範疇として存在する言語では、名詞の指すものと名詞の性との間に必然的な関係はほとんど存在しないと考えられている。